真実の声 · 変容の記録
巡礼者の物語
カイラス山の麓で、人生が変わる瞬間を経験した人々の声
日本人巡礼者を中心に、世界中の巡礼者の真実の体験談をお届けします
カイラスが私を変えた
選りすぐりの物語 — 深く掘り下げた巡礼体験
ドルマラ峠で見つけた答え
あの日、標高5,648メートルのドルマラ峠に立ったとき、私は初めて「生きている」という実感を全身で味わっていました。
「東京のオフィスで失った自分が、ここにいました。酸素の薄い空気の中で、むしろ息がしやすかったのです。カイラスは私に問いかけました——本当に大切なものは何かと。」
鈴木健一さん(45歳・会社員)は、燃え尽き症候群に陥り休職中でした。友人の勧めで参加したカイラス巡礼が、彼の人生を根底から変えました。
三日間、52キロの道のり。初日は不安でいっぱいでした。二日目、ドルマラ峠の手前で高山病の症状が出始め、引き返そうかと何度も考えました。しかし、通りかかった年老いたチベット人巡礼者が微笑みながら手を差し伸べ、共に一歩一歩峠を越えました。
「言葉は通じなくても、あの時の繋がりは何よりも深いものでした。峠の頂上で、老巡礼者は祈りの旗を掲げ、私はただ涙が止まりませんでした。」
帰国後、鈴木さんは会社を辞め、現在は長野県で小さな山小屋を営みながら、巡礼者を受け入れる活動をしています。「カイラスは私に、人生の優先順位を教えてくれました。お金や地位ではなく、人との繋がり、自然との調和、そして自分自身との対話こそが大切だと。」
鈴木 健一
東京出身 · 2025年8月巡礼 · 3日間コース
それぞれの巡礼、それぞれの物語
異なる背景、異なる動機——しかしカイラスはすべての人に等しく語りかける
還暦のカイラス——父との約束
父が生前に果たせなかったカイラス巡礼。60歳の誕生日を機に、私は父の写真を胸にチベットへ向かいました。タルチェンを出発した朝、遠くに見えたカイラスの姿に、なぜか父の笑顔が重なりました。
「ディラプク寺で父の写真を取り出した瞬間、風が強く吹き、経旗が一斉にはためきました。父が『よく来たな』と言っているようでした。」
山田 正雄
愛知県 · 60歳 · 2024年7月
山登り初心者、カイラスへ
山登りどころか、ハイキングすらしたことがなかった私。友人の誘いを断りきれず、半信半疑で参加したカイラス巡礼。正直、最初は「なぜこんなところに来てしまったんだ」と後悔していました。
「三日目、ゾンチュ寺からの帰路。疲れ果てていた私に、後ろから来たおばあちゃん巡礼者が『よく頑張ったね』と微笑んだんです。言葉はチベット語で分からなかったけれど、その優しさで涙が溢れました。」
佐藤 美咲
大阪府 · 28歳 · 2025年6月
仏教研究者の内的巡礼
大学で仏教学を専攻し、チベット密教を研究してきた私にとって、カイラスは文献の中だけの存在でした。実際にこの聖地に立ち、経典に記された聖なる地勢を目の当たりにしたとき、学問では得られない何かが心に響きました。
「知識として知っていた『聖なる山』が、現実のものとして目の前にありました。チベット仏教で『カン・リンポチェ』——貴い雪の山——と呼ばれる理由が、頭ではなく心で理解できました。」
田中 慧
京都府 · 35歳 · 2024年8月
レンズ越しの聖地
プロの風景写真家として世界中を旅してきましたが、カイラスは特別でした。ファインダーを覗くたびに、この山が放つオーラのようなものを感じました。早朝の光が山頂を黄金に染める瞬間——それは写真では決して捉えきれない神聖さでした。
「ある朝、シャッターを切るのをやめて、ただ山を眺めていました。写真家として失格かもしれませんが、あの瞬間こそが私にとって最も貴重な体験でした。レンズを外して初めて見えるものがある——カイラスが教えてくれたことです。」
中村 隆
北海道 · 42歳 · 2025年5月
72歳、カイラスに立つ
周囲からは「無理だ」「危険だ」と反対されました。しかし私にはどうしても行かなければならない理由がありました。50年前、新婚旅行でチベットを訪れる約束をした妻。彼女は10年前に他界しましたが、その約束を果たすために。
「ゆっくりと、一歩一歩。若い巡礼者たちが追い越していくのを見ながら、私は妻との50年を一歩一歩思い出していました。ドルマラ峠で妻の写真を掲げたとき、不思議と疲れは消えていました。約束を果たせた喜びで胸がいっぱいでした。」
伊藤 和子
神奈川県 · 72歳 · 2024年9月
写真で綴る巡礼の記録
巡礼者たちが捉えたカイラスの神聖な瞬間
黄金の夜明け
撮影:中村 隆
聖なる山容
撮影:田中 慧
マナサロワールの静寂
撮影:鈴木 健一
祈りの旗
撮影:山田 正雄
草原のキャラバン
撮影:佐藤 美咲
ドルマラ峠の朝
撮影:伊藤 和子
雲海の聖峰
撮影:中村 隆
巡礼の終わりに
撮影:鈴木 健一